AngelBeats!

コラム - リレーコラム AngelBeats!よもやま話

皆様、初めまして。
『Angel Beats!』で制作デスクを担当しました、ピーエーワークスの相馬と申します。

先日、アニプレックスの鳥羽さんより、こんなメールを頂きました。
「無事に13話終わったところで、リレーコラムを相馬さんにお願いできればと思いますが、如何でしょうか?辛かった事を沢山書き連ねて頂いても結構なので、是非、当時のリアルな現場の状況を書いて頂けると嬉しく思います。」

辛かった事…リアルな現場…書いて良いのだろうか…(笑)
と思いつつ、今もPCに向かって、何から書こうか苦悩していたりします。
これまでの皆様のコラムを読ませて頂いていると、それぞれの立場から見た「Angel Beats!」が垣間見え、とても面白かったです。
では、自分が、この壮大な祭りのどこにいたのかと言うと…
祭りの中心部、その櫓の上で、壊れんばかりに太鼓を叩く岸監督を止め続けていたなぁと。

はぁ…。(1人ため息)
踊○大捜査線では無いですが、「事件は現場というか、今、目の前で起きてるんだっ!!ちょっと監督っ!太鼓壊れるからやめて下さいっ!!」みたいな(笑)
やはり、監督との現場でのやり取りしか書けそうにないので、ありのまま書いてみます。

まず自分と「Angel Beats!」との出会いは2008年11月頃になります。
ある日、社長から「これ読んでまとめてみて」と大量のシナリオを渡されたのを覚えています。
その時は、とにかくバ~~~っと読んでまとめてしまったのですが、
今思えば「1話数のシナリオが40ページある」という事実にもっと早く気付くべきでした…
(通常1話は20ページぐらいなので、1話に2話分入っている事に!?)

それから5カ月ぐらいが過ぎた頃、これも唐突だった気がするのですが、社長に呼ばれました。
堀川P「Angel Beats!もうすぐだから」
相馬「Angel Beats!…あぁ、去年まとめたアレですか!」
堀川P「もう監督も決まってるから。岸監督」
相馬「岸監督と言えば、瀬戸の○○ですね」
堀川P「うん、ギャグって聞いてたんだけどなぁ…ま、君デスクよろしく」
相馬「はい。ギャグじゃないんですか?…というか、デスク??」
さりげなく仕事を振れるのがプロデューサーと呼ばれる方達なんですね、分かります。
こうして、制作デスクとして「Angel Beats!」制作戦線が始まったのですが、我々は、この先に待っている凄まじい体験をまだ知る由もなかったのです。


「Angel Beats!」の制作現場を一言で表現すると「祭」とか「戦場」とか色々思い浮かぶのですが、今回、オーダーがあったのは"リアル"な現場をという事ですので、そうなると少し違うかなと。
本当にリアルな話をすれば、現場は「革命児vs職人」だったと思います。
1つの作品を作る上で、それに関わる全ての人の意見を与する事は不可能です。
今回のような一大プロジェクトともなれば尚更ですが、特に難しかったのは、やはり岸監督の要求を、今のピーエーワークスでどこまでやれるのか。という事です。

今回、岸監督が目指したのは、とにかくKeyと麻枝さんの作品を待っているお客様に、いかに満足してもらえる作品を作れるか。そして、満足して頂ける作品が維持出来ないなら、この企画をやる意味は無いと言う極論的なものでした。しかも、それを達成する為には、どんな手段も辞さないし、誰も見た事がないものを作る!今までのアニメ作りの概念など早々に捨てなさいと(笑)

しかし、これ笑い事じゃなく本当に難しい事なんです。
人出が足りない、技術力・表現力が追いつかない、スケジュールがヤバい…
制作現場には色々な問題が発生しますが、その殆どは、何らかの手段で最終的に解決出来ます。
ただ、人の意識を変える事。今まで築いてきた概念を1回捨てる事。
監督のやりたい事を、現場に理解してもらう事こそが、もっとも大変な道のりでした。

そもそも、岸監督って人はですね…。
一見、破天荒そうに装ってますが、その一方で恐ろしくリアリストでもあり。
と思えば、ホントに何も考えずノリで言ってるな…って時もある。
妥協一切無し。やれといったら、絶対やらせる。
無茶振り上等!!俺が行かなきゃ何も始まらねぇんだよ!!と…。
はぁ…(1人ため息2回目)
自分でも、いつから意識するようになったかは覚えていないのですが、
この監督とやる以上、自分の仕事は「現場を維持すること」になるかなと。
岸誠二という荒男に現場スタッフはどこまで食らいついていけるのか!?
そして、終わった時、誰が生き残っているのか!

まぁ、結果としては、全員生還出来たんですけどね(笑)
メインスタッフは最後まで誰も逃げずに、嵐に立ち向かって下さいましたし、
それどころか、押し寄せるハチャメチャ全てに、自ら巻き込まれていき…。
「しんどい…けど楽しい」という、まさに祭前夜を半年間継続するという荒業!

でも、それがあったからこそ、Angel Beats!はファンの皆様に受け入れて頂き、
最終的にスタッフの苦労も報われたんじゃないかと思ってます。
熱くなって、バカになって、皆で盛り上がれる作品に巡り合えるのは、本当に幸運な事です。

さて、そろそろ原稿提出〆切が近づいてきました。
もう2000文字は超えたので、大丈夫…なはず!
では、最後にこれだけは言っておかねばなりません。(強引にまとめます!)
今回の作品で、ピーエーワークスは過去最高のヒットと引き換えに、大事なものを失いました。
それは、全ての部署に責任ある仕事をしてもらう為のスケジュール管理。
そう、「制作としてのジャスティス」です!

今回は残念ながら完敗と言わざるを得ません。
現場を維持は出来ましたが、自分は制作として全然ダメでした。
監督の要求を押さえる事が出来なかった分、現場に与えた負担は相当だったはずなので…
その点については、今も猛反省しております。

だからこそ、敢えて言わせて下さい。

誠二!!!いつか必ず、貴方を押さえる事が出来る制作になるっ!!!!
と言う事で、今度一緒に仕事をする時は、やはり15年後で!(笑)
きっと、その頃には、マツジュンがデスクやってくれてるはず。
あとは任せた!!

それでは、関わって下さった全てのスタッフの皆様。本当にお疲れ様でした!
そして、岸監督もお疲れ様でした。また飲みにいきましょう。


ピーエーワークス 相馬

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