AngelBeats!

コラム - リレーコラム AngelBeats!よもやま話

「Angel Beats!」の放映を楽しみにして下さっているみなさんコンニチハ。
この作品でアニメーション制作を担当しておりますピーエーワークスの堀川です。

アニプレックスの鳥羽プロデューサーによると、このコラムのノルマは最低2000字なのだそうです。普段からブログでも書いていない人にとっては結構な分量ですよね。先日もPから催促のメールがあり、「あっ!」と返信してお茶を濁したのですが、ついに締め切り日がやってきてしまいました。清水義範の「深夜の弁明」をご存知でしょうか? 締め切りに間に合いそうにない作家が、編集者にお詫びと弁明をツラツラと書き綴っていたら、割り当て枚数を超えてしまったという素敵なお話です。こんな時とても勉強になります。読み直そうかな。

2010年にこの作品の放映が始まると、『Angel Beats!』を制作することになった経緯は?」、「麻枝さんとお仕事されてどうでしたか?」、『Angel Beats!』の制作で目指したものは何?」って、何度も聞かれることになるのでしょうね。むしろ、そうならなければなりません。でも、企画に参戦したのは今からか1年半前。日記もつけていないし、今のうちに過去の曖昧な記憶を整理しておかないと、後々返答に困ることになりそうです。考えをまとめるには良い機会かもしれません。

Q.『Angel Beats!』を制作することになった経緯は?
確か2008年の3月のことです。鳥羽プロデューサーがP.A.にやってきて、Key作品と麻枝准氏のことを滔々と語ったことに始まります。P.A.の社員にもKey原作のアニメを見て「これで泣けなければ人じゃない」と号泣する者はいたけれど、鳥羽PのKey伝道師ぶりはそんなうわべのものじゃなかったですよ。

頬を上気させ、クマも腰が引ける勢いで、P曰く、 「自分は辛い日々をKey作品に救われた、世に鍵っ子と言われる者である。麻枝さんは、『リトルバスターズ!』を自身最後のゲームシナリオと位置づけた。勿体無い。彼の復活を10万人の信者が渇望している。故に、自分は全話麻枝准脚本アニメーション企画を立案した。参戦されたし」。
口調はちょっと違うけれど、だいたいこんな内容だったと記憶しています。

「ちょっと待ってほしい。P.A.は今(2008年3月)真実の涙の物語を作っています。あなたが先日目撃したとおり、ヒロインが木から飛び降りたばかりなのに、また泣ける物語はご容赦ください。次回作はアクションものに決まっているし、その次の課題は作画のギャグ表現かな、とぼんやり考えていたところです」。

冬眠を決め込んだクマの、穴を埋めてP曰く、「ところが、麻枝さんの魅力は『泣き』ばかりではない。彼のギャグがどれ程面白いか。『恭介の一問一答』を知っているか? 「棗恭介風来記」を今度送る。笑い転げること間違いなし。今回企画している作品は学園コメディーである。貴社の課題にピッタリ。麻枝さんはこの作品でギャグにも力を入れる。ついでに曲も書く。なんでもできる人なのだ。自分の使命は彼のやりたいことを作品にすることである。それが全て。それが全て。よって参戦されたし」 そう締めくくって決断を促されました。
「学園コメディー」という単語にちょっと揺れたけれど、アウェーで初出場を果す新人の、試合前夜の眠れぬ緊張にも似たこの重圧は何でしょう。

「あなたの話からは徒ならぬ試練の匂いがします。いざ制作が始まれば、難題が雨後の竹の子みたいにニョキニョキと噴出する予感が致します。虎尾を踏んで火中の栗を拾え、と、聞こえなくもない。イヤです、いや、失礼しました。ちょっと考えたいです。時間を下さい」。

考えた末に参戦を決めたのは、「ギャグ」の掛け合いといえば台詞の間が命。そこに一歩踏み込んだポスプロダクション(編集・音響)にチャレンジしてみたいという好奇心と、鳥羽Pの作品やスタッフに献身的であろうとする覚悟を感じたからです。Pとしてヒットの大使命がありながら、即物的な(笑)匂いも感じなければ、お座なりの対応もなかった。この姿勢(作品愛)は一朝一夕で身につくものでは無いのです。小心翼々としていては挑戦的な作品や、刺激的な才能あるスタッフには出会えないしね。これも新しい出会いだし、このタイミングでやって来た流れに身を委ねてみようと覚悟を決めました。 「では、麻枝さんのシナリオを最も良い形でアニメーション作品にすることを、今後の揺ぎ無い戦略目標にしましょう」

Q. 麻枝さんとお仕事されてどうでしたか?
先日の「脚本全話終了打ち上げ焼肉会」で、麻枝准さんに、「俺と仕事をしてどうでしたか?」と感想を求められ、「じゃあ、それはコラムで書きますよ」と、迂闊にも言ってしまった手前、「シナリオ会議の想い出」を書こうと思うのですが、だがしかし!考えてもみてください。原作者を批評するようなことは、できることなら避けたい。少なくとも、残り50字程度で書いてはいけないと思うのです。デヘッ。それは次回(担当回がまたあれば)コラムで書きたいと思います。

Q.この作品で目指したものは何か?
残念。あと2000字必要です。
では、岸監督の歩留まりを知らない要求を、無事完成させて皆さまにお届けできることを祈りつつ。

ピーエーワークス 堀川

※第4回リレーコラムは12月15日に掲載予定です。

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